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第40回 市民科学研究室(市民研)の上田さんに聞く【5】 ~自分自身で調べることが誰にも必要とされている~

 最後の週は原発や放射能など専門性が高く難しいために、専門家でも意見が分かれるような問題を一般市民はどう向き合っていけばいいのか についてNPO法人市民科学研究室(通称・市民研)代表の上田 昌文さんにお話をお聞きしたいと思います。

市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)
市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)

上田:
先ほど専門性が高く難しい、という言葉を使われましたが、そこに罠のようなものがありまして。それはどのようなものかと言いますと、専門家というのは自分の専門の分野を持っていますが、その道をちょっとでも外れると本当にド素人な人の集まりなのですよね。
 原発の問題、放射能の問題に関しては、あたかもその専門家がいるように見えますが、実は全体を見渡して語れる人はいないと思ってください。例えば放射能について人体影響は語れても、廃棄物に関しては全く知らない、事故の事は分からない。そういった人たちが集まって知恵を出し合って全体を見ようとしているのですね。
 そのことを踏まえて、一般市民は専門性に対してどうやってアプローチをしていくかという時に、ひとつ大事な事が見えてくるのです。それは何かと言いますと、私たちは生活していてエネルギーを使い、健康のことも気を使い、食べ物も食べ、ということで生きていくためにトータルで物事を対処して活動しているという面があるのです。
 そして、それを専門性でぶち切りにしていくと専門家の言っていることは耳を傾けなければいけない部分があるのですが、トータルで誰が見てくれているかと言いますと、それは専門家ではなく、あくまで生活している人なのです。
 例えば避難させられた人が「なんでこんな目に合わないといけないのか」とか「いつになったら住んでいた場所に戻れるのか」「こどもは大丈夫か」というのは根源的な疑問で、それを専門家がいきなり答えを与えてくれると考えるのはおかしいのです。ですから専門家のいうことは必要な部分は理解して勉強していかなければいけませんが、それで終わることは決してないということを私たちは知っておかないといけないですね。
 そのためには一般市民は孤立してはいけないのですね。いろんな情報を共有している人たちが、いわば目に見えない手をつないでいるような形で、「あなたはどう思う?」などの議論がいつでもできる形を作るというのはとても大事です。そういう意味ではTwitterなどを含めたあらゆるITを使って意見を交わせるような環境にどんどんなってきているというのはとても良いことだと思います。
伊藤:
逆にSNSが普及したことによるデマがある場合や、震災時に専門家ではないような人が専門家ぶって発言もしていますし、それがセンセーショナルな注目を集めてられているという事例がありましたが、それについてはどうお考えですか?
上田:
それはすごく重要な問題で、一つはメディアの責任です。そのメディアが自分であまり勉強せずに専門家の意見を頼ります。これによって、いい加減な情報が流れる可能性があります。どうやってメディアが良い情報にアクセスできるようにするかがとても重要です。
 そういう意味では、その記者なりに勘を働かせるという鍛え方が必要です。市民の側はいろんな情報が入ってくるので確かに惑わされます。そこをまず自分で自覚しなければいけません。市民にとって大事なのは「ちゃんと根拠のある情報なのか」ということを検証するということです。検証するということは専門家だけでなく誰にでも必要なことなのです。世間で言われていることに対して「本当なのか」という気持ちをいつも持ちつつ、調べられる範囲で調べていくという「物事を疑う姿勢」というのは基本中の基本です。
佐々木:
面倒くさがらないということですよね。誰かから聞いてそれを鵜呑みにして言ってしまう人と、一度、裏を取る人がいるわけです。僕らみたいな記事を書いたり、番組を作ったりする人には大事なことです。面倒くささというのは、こういう時こそ大事なのですよね。一瞬「そうかも」と思ってしまう人間の心理というものはありますよね。
上田:
ありますよね。例えば放射能が降った時に子供が鼻血を出した。いう情報が飛び交った時に、「放射能のせいだ」となってしまう場合があります。しかし、本当なのかは検証しなければいけません。沢山の情報が出てきたというのは事実です。しかし、それを放射能が原因だと思ってはいけないということを知る必要があります。
佐々木:
5週に渡ってお話を伺ってきましたが、最後にリスナーや学生へのメッセージをお願いします。
上田:
学生の一番良いところは、しがらみを気にせずに動き回れるということだと思います。動き回って「これは何だ!」といった面白い発見があったり、びっくりした事があったりしたら、それを自分で調べることです。
 調べたら色々な事が見えてきます。その時に専門なことにぶつかることはありますが、それは理系や文系などの括りは全く関係なく考えていかなければいけません。「私は文系だから」という逃げ方はもう通用しません。ぶつかったらあらゆることを利用する、つまり専門家と呼ばれる人に電話をかけ、メールを書いて、自分の体を動かしながら自分の知りたいことを確認し調べていくということを体験したら、その後に活きていくと思います。

担当

宮本 将司(法政大学)

宮本 将司(法政大学)