HOME > リサーチ部 > 市民科学研究室(市民研)の上田さんに聞く【3】 ~原発事故以降の食べ物について~

リサーチ部

第38回 市民科学研究室(市民研)の上田さんに聞く【3】 ~原発事故以降の食べ物について~

 先週に引き続き、NPO法人市民科学研究室、通称「市民研」の代表の上田 昌文さんに、IVUSA理事の伊藤が、株式会社ジェイクランプの代表取締役社長の佐々木 健二さんとともに、お話を伺います。

市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)
市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)

伊藤:
今日は私達の生活に大きく関わってくる食べ物の問題についてお話を伺いたいと思います。まずは佐々木さんお願いします。
佐々木:
福島県南相馬市の南相馬ひばりFMの方に、お魚の意味の漁業の方はやはりまだ試験的な操業だと伺いました。しかし、貝類が割と大丈夫だともお聞きしたのですが、どういうことなのでしょうか。
上田:
食べ物の汚染を考える時には大きく分けて二つのことを考えなければなりません。一つは農産物、そして二つ目は海産物です。先に海産物のお話をしようと思います。実は原発事故後あらゆる調査により、貝類や海藻類の放射能の取り込みが意外に少ないことが分かってきました。空から降ってきた放射能が付着して、一時はその濃度を示す数値がとても高いものがでたのですが、2012年の初めくらいからどんどん減ってきまして、その後は限界値以下までになってきています。
佐々木:
それはどうしてなのでしょうか。
上田:
お魚の場合は食物連鎖により濃縮が起こります。人間と一緒で一定の期間体内に溜め込んでから排出するのです。その食物連鎖と排出のメカニズムにより、例え水の汚染が少なくなったとしても体内から汚染が消えるまで二年はかかると言われています。しかし、貝類や海藻類の場合はそのサイクルの速さに違いがあり、排出に要する期間が短いのです。
 このことから、今貝類や海藻類は大丈夫です。実際心配なのは貝類や海藻類ではなく、お魚の方です。未だに数値が高いものもあり、試験操業的な漁業がなされていることからも分かるように、現在、原発周辺の湾ではお魚が入って来ないように対策が取られています。
佐々木:
フェンスのようなものですか。
上田:
はい。そのようなものをつけてお魚が入って来られないようにしているのです。汚染水が出続けているという現状がある以上、お魚に汚染を移行させないためです。
佐々木:
しかし、水は流れますよね。
上田:
はい、そうです。事実汚染水はかなり拡散します。ですが、放射能が濃厚な部分に近づけさせないという意味でこの対策が取られています。
伊藤:
濃縮が良くないからですよね。
上田:
はい。濃度の高い濃縮を避けるためです。しかし、二年半くらい経つとカレイのような海底にいるお魚でも数値が下がってくる傾向もみられています。
佐々木:
では、貝類や海藻類のようなサイクルは農産物にも当てはまるのでしょうか。
上田:
農産物はまた少し複雑なのです。初期の頃はほぼ全てのものに被害がありましたが、二年経つと、いまだに数値が出るものとほぼ出ないものに分かれます。
佐々木:
植物で、ですか。
上田:
はい。筍、山菜、茸、蓮根、野生の猪、梅、栗、林檎、梨、柿のようなものはいまだに出ます。しかし、私達が現在食べているような野菜類はほぼ出なくなってきています。
佐々木:
何故ですか。
上田:
まだ解明されていない部分もあるのですが、実はセシウムというものは、土によく吸着します。そのため、根からの汚染の移行は僅かです。しかし、樹木になると違います。セシウムは木の表皮に吸着し、そこから実の方に移行します。
 そのため当時、木の皮を剥いでいらした農家の方も居ました。そうすると二年目は若干減り、これからも減るだろうと言われています。茸はまた生育の仕組みから違います。菌糸から体をつくりますので、体全てが表皮ということになります。そのためです。
佐々木:
なるほど。
伊藤:
実際私達が日常生活の中で、放射能を気にするものはないということですか。
上田:
市場に出ているものはほとんどのものは大丈夫です。しかし、茸や梅などそして何故か大豆も出ています。大豆は加工食品に回っている可能性もあり、麦にも多少残っていますが、いくつかの品目にさえ気を付けていれば内部被ばくはほとんど避けられると思います。
伊藤:
ありがとうございました。日本人は食の安全を気にする傾向も強く、今回のお話は特に小さなお子さんを持つ方々にも気になるお話だったのではないでしょうか。

 来週は広島・長崎の原爆の問題にも絡めてお話を伺いたいと思います。

担当

上田 歩(中央大学)

上田 歩(中央大学)