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第37回 市民科学研究室(市民研)の上田さんに聞く【2】 ~放射能の現状~

 先週に引き続き、NPO法人市民科学研究室、通称「市民研」の代表の上田 昌文さんに、IVUSA理事の伊藤が、株式会社ジェイクランプの代表取締役社長の佐々木 健二さんとともに、お話をお伺いします。

市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)
市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)

佐々木:
私が先週話した、南相馬の立ち入り禁止区域から解除された地区へ取材に行った際に、やはり放射性物質について不安に思ったのですが、ひばりFMの方が、常に線量計を持っていて、どこに放射性物質があるか大体わかるといっていました。現在の原発周辺の濃度はどうなっているのでしょうか?
上田:
一つは、原発自体をどう処理していくのか、というのが大きな問題として残っていて、また、降ってしまった放射性物質がどこにどのようにたまって残っているのか、ということがあり、原発自体のことについて、今一番深刻な問題となっているのが、汚染水の問題です。地下水がどんどん流れ込み、本来、冷却に使った水を、プールやタンクにためていくことで何とかしのいでいるのですが、地下水がどんどん流れ込むため、処理しきれない状態になり、汚染された水を、そのまま海などに流すということを時々行っているのです。
 そのため、海の汚染が止まらず、先の見通しもほとんど立っていません。そういう意味では、陸上は降り注いだ放射性物質は、その後さらに増えることはないのですが、海は、いまだに汚染が広がっている、というのが一つ目の問題です。
 二つ目の問題として、南相馬を含め、降ってしまったセシウムを、政府が除染を進めていて、学校や住宅地など人の居住地域を優先的に行っていますが、全体の面積からすれば、まだ一割にも達していないという状況があり、森林、山間部などは、今後も除染はおそらく無理でしょうから、そこの汚染は半永久的に残るということになります。
 ですから、そこからセシウムが移行すれば、川や田畑や水田を通して、汚染が下流の居住地域へ移行していくということが起こってしまうので、長い目で汚染がどのように推移していくかということを、これからも調査しなくてはなりません。例えば南相馬に実際に行き、どこに放射性物質が多く残っているかというのは、市街地の場合、側溝部分などの吹き溜まりに多くたまることがわかっているので、そういうところを避けて生活したり、重点的に除染するなどの対策を行ったりするなどの必要があります。
佐々木:
高速道路や国道などの幹線道路などで放射性物質の近くを通る場合は、一時的なものですが、その際の影響はあるのでしょうか?
上田:
その問題に関しては、人が居住しても害のない線量というのが、年間20ミリシーベルトで、これが一つの避難基準だったのですが、汚染がひどかった地域を除染が済み、放射性物質の半減期による線量の低下により、ある時期から、年間20ミリシーベルトを超えなくなるので、住めるようになる地域が出てきます。現在行っている帰還政策は、こういった部分的な地域に人を戻しているのです。
佐々木:
夜間の宿泊禁止令というのも結局線量の問題ですか?
上田:
ええ、結局長期間そこにいると線量が基準値を超えてしまうので、規制によってそれを抑えつつ、一方で、除染を進めて、さらに線量を下げていき、最終的には人が完全に住めるようにしようというステップを踏んでいるのです。
伊藤:
実際、除染の進捗が全体の1割にも満たないという中で、今後も除染はやり続けていく方向なのですか?
上田:
政府はその見解です。除染をどんどん進め、人の住める地域を増やしていこうというという考え方なのですが、先ほども言ったように、一旦除染した地域でも山間部に近ければ、再び線量が上がってしまうというのと、除染にかかるコストの問題から、今後数年は膨大なお金をかけて除染を行いますが、その効果を見て、打ち切ることや、居住地域の限定、例えば、南相馬市でも、全域ではなく、というように人の住む地域を限定していくことが考えられます。
伊藤:
住む地域の選択をして、無理な地域はあきらめるという風に決断せざるを得ないのでしょう。実際、除染費用は税金から出ているので、無尽蔵にという訳にはいきませんしね。
 原発事故に関連して、このほかにも私たちが、知っておくべきことというのはありますか?
上田:
線量が低くなったら人が戻ってくるかというと、そうではありません。先ほどあげた、年間20ミリシーベルトという基準は事故前と比べると約20倍高くなっています。赤ちゃんや小さいお子さんのいらっしゃる若い親御さんたちが、以前とは比べ物にならない高さの線量の地域に戻りたいと思うか、ということです。
 そうすると、高齢の方は何とか戻ってきたけど、若い世代の人たちが全く戻ってこないということになり、コミュニティの崩壊や産業復興の断念せざるを得ない状況になってしまいます。このようなことから、汚染の大きかった地域では、元のコミュニティの再生は不可能ではないでしょうか。
伊藤:
健康だけでなく、地域そのものが消滅していくということが起こりうるのですね。

 来週は、食べ物のことについて、お話を伺っていきたいと思います。

担当

鎌田 隼人(法政大学)

鎌田 隼人(法政大学)