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第36回 市民科学研究室(市民研)の上田さんに聞く【1】 ~福島原発のまわりは今どうなっているのか?~

 今回は、IVUSAの理事をやっている伊藤が担当させていただきました(学生ではありません)。
 東京都文京区千駄木にあるNPO法人市民科学研究室、通称「市民研」の事務所で、市民研代表の上田 昌文さんと、防災ラジオを制作してくださっている株式会社ジェイクランプの代表取締役社長の佐々木 健二さんの対談形式で、これから5週にわたり、原発の放射能問題について、お話を伺っていきたいと思います。

市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)
市民研の上田さん(右)とジェイクランプの佐々木さん(左)

伊藤:
まず、市民研代表の上田さんにお尋ねしたいのですが、市民科学研究室とは、どのような団体なのでしょうか?
上田:
原発の事故のように、突然降りかかってくる様々なリスクやナノテクノロジーや出生前診断のように、生活の中に入りこんできた新たな技術が起こした問題によって自分たちが被る被害への良い対処法を、テーマを決めて調査、研究し、情報発信しています。また、調査や情報発信では、研究者だけでなく、一般市民も参加、むしろ、一般市民が主体となって、研究者はあくまで市民のアシスタントという形で研究や調査、情報発信を行っている団体です。
伊藤:
上田さんご自身は科学の分野をご専門にしてらっしゃるのですか?
上田:
はい、私は生物学を専攻していまして、博士課程まで取得しているのですが、後に、NPO法人の勉強会を市民の仲間と小規模ながらもはじめ、今年、開設二十周年なのですが、二十年近くかけ、こういったNPO法人となりました。
伊藤:
普段、防災ラジオの制作を行ってくださっている佐々木さんですが、最近、原発に近い、福島県の南相馬市に行ってこられたということで、お話をお聞きしたいと思います。
佐々木:
4月の中旬に岩手県にある、臨時災害放送局5局と、5月14~19日にかけ、宮城県と福島県にある臨時災害放送局で取材を行なってきたのですが、その中で、南相馬市の南相馬ひばりFMという原発から一番近い臨災局で取材した際の話です。南相馬市内は大きく三つの地域に分けられ、北から鹿島、原町、小高、となっていますが、平成の大合併で一緒になり、南相馬市となったため、地元の人は南相馬市民としての意識はあまりないそうです。
 例えば、小高地区というのは、原発から20キロ、原町、鹿島と北に行くと30キロ原発から離れているのですが、同じ市の中でも賠償の違いがあり、それに津波の被害、地震の被害です。場所によっては三重苦です。
 小高に関しては昨年の4月に立ち入りが許可されるようになったのですが、宿泊は未だに禁止されたままだそうです。南相馬市の南隣の十キロ圏内である浪江町への立ち入りが許可されました。許可証がなければ入ることはできませんが、今回、ひばりFMの方の同伴として行くことができました。実際行ってみると、周囲は生活音のない無音の世界。犬や猫などの動物の姿もそこにはなく、町が死ぬというのはこういうことなのだという怖さを感じました。
 ちょうどその時に宮城県で、震度5以上の大きな地震があり、写真を撮っていたとき、地鳴りのような音が聞こえ、2秒ほど後に揺れが来ました。聞こえてくるのは周囲の建物のきしむ音だけ。人の住まない住居は揺れにより外壁などがはがれる一方で、相当痛んでいるようでした。正直、あれを見てしまっては、地元の方も浪江に帰れないというより、あきらめざるをえない状況になってしまったのではないかと感じました。インフラや除染、住まいの建て替えなど帰るにあたっての障壁が多すぎるのです。

南相馬ひばりエフエムのスタッフが常に持っている線量計 南相馬ひばりエフエムのスタジオ兼事務所 ほとんどの臨時災害放送局は簡素な状況の中で放送をしている
(左)南相馬ひばりエフエムのスタッフが常に持っている線量計
(右)南相馬ひばりエフエムのスタジオ兼事務所
   ほとんどの臨時災害放送局は簡素な状況の中で放送をしている

南相馬ひばりエフエムに貼ってあったポスター 2012年11月時点、比較的線量が低い事がわかる  2013年5月18日撮影、南相馬市小高区 現在も瓦礫が残ったままである
(左)南相馬ひばりエフエムに貼ってあったポスター
   2012年11月時点、比較的線量が低い事がわかる
(右)2013年5月18日撮影、南相馬市小高区。現在も瓦礫が残ったままである

2013年5月18日撮影、浪江町 人も動物もいない中心地 信号だけが点灯していた  2013年5月18日撮影、浪江町 震災直前のイベントチラシが貼ってあった
(左)2013年5月18日撮影、浪江町
   人も動物もいない中心地 信号だけが点灯していた
(右)2013年5月18日撮影、浪江町 震災直前のイベントチラシが貼ってあった

2013年5月18日撮影、浪江町 震災当時のまま放置されている 現在も地震が何度も発生しているが、その都度崩れている 2013年5月18日撮影、浪江町 震災当時のまま放置されている 現在も地震が何度も発生しているが、その都度崩れている
2013年5月18日撮影、浪江町 震災当時のまま放置されている
現在も地震が何度も発生しているが、その都度崩れている

2013年5月18日撮影、南相馬市小高区JR小高駅の駐輪場 自転車は当時のままとの事
2013年5月18日撮影、南相馬市小高区JR小高駅の駐輪場
自転車は当時のままとの事
画像提供:株式会社ジェイクランプ

担当

鎌田 隼人(法政大学)

鎌田 隼人(法政大学)