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レポート部

第43回 臨時災害放送局 南相馬ひばりエフエムの今野 聡さんに聞く【2】

宮本:
現在の南相馬市の放射線の量はどのような状況ですか?
今野さん:
太平洋沿いに位置する南相馬市は原発からの距離は20kmと近いのですが、事故直後の風の流れなどもあり、「近い割にはさほど高くはない」状況です。実は関東や東京と同じくらいの線量の場所も南相馬にはあります。
 放射能は段々威力を失っていくので、線量も下がってきています。民間支援団体で市内の線量マップを定期的に策定しているグループがいるのですが、南相馬市は外部被曝量としては年間1ミリシーベルトを切る地区がほとんどになってきました。
 もちろん山沿いやホットスポットのような場所はありますし、事故前よりは高いのですから「安全で何も考えなくてよい」というわけではありません。意識や情報の把握に差はありますが、家庭菜園の野菜は検査に持って行くなど、対応をしながら暮らしています。
宮本:
産業や人口の状況はどうですか?

臨時災害放送局 南相馬ひばりエフエム チーフ 今野 聡さん
臨時災害放送局 南相馬ひばりエフエム
チーフ 今野 聡さん

今野さん:
震災前の南相馬市は人口7万人でしたが、事故直後は1万人を切るほどになりました。しかし、いま現在5万人ほどが住んでおり、かなり戻ってきたという印象を受けます。それは放射線について勉強して、避難先での疲労や、学校の再開、仕事の再開などをきっかけに戻って来ています。
 隣の浪江町の人などで「なるべく自分たちが住んでいた近くに住みたい」と南相馬市に避難する人も多いです。
宮本:
南相馬市の商店はどうですか?
今野さん:
南相馬市は再開したお店もだいぶ増え、ある程度不自由なく生活はできます。
 スーパーなどの閉店時間などは早く、20時には店が閉まってしまいます。労働力が不足しているという理由もあります。
 交通も南北が電車、高速道路の分断などがあり不自由があります。医療も医者・看護師が不足しており、「安心して充実した暮らし」を送るには、まだまだ完全ではないと感じます。
宮本:
農業や漁業の状況はどうですか?
今野さん:
農業は福島県ではお米の全量検査をしていますが、ほとんどが下限値以下で問題なく食べられるという認識をして良いと思います。
 南相馬でも試験田でとれたお米を検査していますが同じような結果です。
 しかし、南相馬市ではお米の作付けを震災後行っておらず、今年度も作付けをせず賠償を求める方向になりました。
 南相馬市内に入ると、みずみずしい田んぼの景色がなく、雑草だらけや茶色の田んぼが目に入り、驚く人も多いです。
 他の作物については作付け制限がなく、仮設住宅近くの畑を借りて菜園を楽しむ人もいます。食品検査体制はしっかりしていて、一部を除いたほとんどの作物は検出限界以下ですが、風評被害はいまだあると感じます。
 海産物は相馬沖で試験操業を始めてタコ、イカ、貝などはしっかり検査をした上で問題ないということが分かりましたので、販売をしています。
 農作物についても内部被ばく検査も、放射能の検出には「検出限界」という不透明な部分がありますが、限りなく安全を確認し、自分たちの「やりがい」や「日常」を取り戻そうと、住民は奮闘していると私は感じます。
宮本:
大学生へのメッセージをお願いします。
今野さん:
東日本大震災からの復旧・復興には、まだまだ長い時間がかかると思っています。
 未来を担う、いま学生・大学生の皆さんにはこの震災としっかり向き合ってほしいです。
 テレビやネットでいろいろと情報を得ることはできるが、現地でしかわからない、感じられないことも多いです。
 南相馬市の交通の便は悪くなってしまいましたが、夏にはこの地域の最大のお祭「相馬野馬追い」が開かれます。鎧兜に身を包んだ騎馬武者が街を闊歩する勇壮な姿を、ぜひ、観光しがてらこの街に来てもらえたら嬉しいです。
 私たちの経験から良い防災番組を作っていただければと思っています。

担当

宮本 将司(法政大学)

宮本 将司(法政大学)